東京のワンルームの部屋で猫を飼うことについて

2013/04/08

 猫を飼ったことがない。飼ってみたい。真剣に飼おうかどうか考えている。猫がいる生活とはどういうものだろうか?

 仕事から帰ってきた僕は部屋の窓を開ける。夕食の支度をしていると、いつのまにか窓の隙間から猫が入ってきてソファの上に座る。僕は自分の夕食をテーブルの上に置き、ついでに銀色の皿を床に置いてそこに牛乳を入れる。でも猫はすぐにそれを舐めにこない。僕が夕食を食べ終わり、片付けをしてシャワーを浴びて出てくると皿は空になっている。猫は僕の代わりにちょこんと椅子の上に座っている。僕は猫を放っておいて布団を敷いて寝る。

 翌朝になると布団の中に猫がいる。僕が布団から起き上がって歯を磨いて部屋に戻ってくると猫はいなくなっている。外に出て行ったようだ。空になった銀色の皿を洗って、僕は仕事に行く。猫に名前はない。ホリー・ゴライトリーもハルハラ・ハル子も言うように、飼い猫には名前をつけたくないのだ。

 たとえばこのような風景だ。
 
 しかし現実的に考えてみると、この生活と実際に僕が自分の部屋で猫を飼う状況のあいだにはずいぶん差がある。まず、猫を自由に出入りさせると部屋の中がどろどろになってしまう。窓際に水を張った洗面器とタオルを置いておくと自分で足や体を奇麗に拭いてから入って来てくれるのであれば助かるのだが、そうはいかない。それにそんな猫はなんだか気持ちが悪い。全然かわいげがない。衛生面の問題だけでなく、エサの問題だとか、近所の他の猫との関係性なども問題になるはずだ。外猫には外猫の、家猫には家猫の躾がきっと必要なのだ。

 じゃあ部屋の中だけで飼えばいいじゃないか、と考える。実際にマンションの部屋でそういう飼い方をしている人もたくさんいる。でも、僕は用事があって外に出かけなければいけないこともあるわけで、そのあいだ猫をどうしておけばいいのかがわからない。たとえば部屋の電気はつけておくべきなのかだろうか。猫を飼っている人たちはみんな外出中も猫のためにずっと電気をつけっぱなしにしておくのか? それとも電気を消してしまっても猫はぜんぜん平気なのか? どっちにしても外出中に部屋のことが気になりすぎる。だめだ。猫が好きで猫を飼おうとしているのに、暗い部屋の中で寂しそうに丸まっている猫のことを心配するような事態に陥るのは本末転倒だ。

 もちろん広い庭がある田舎の一軒家に住んでいれば話は別なのだろうけど、主人の方がそれこそ猫の額みたいに狭い部屋をやりくりして住んでいる状況ではやはりうまい解決策が出てこない。悩んだ末、猫を飼うことをまた却下する。ほんとうに飼いたいんだけどな。