漫画の記憶

2013/04/22

 シャンクスが山賊に絡まれて頭から酒をかけられるけどそれをいなすシーンがとても好きだ。ワンピースの一番はじめの話だ。高校の運動会のときに誰かが観戦席に持ち込んでいた単行本が回ってきて、8巻ぐらいからカウントダウンで逆順に読んだ記憶がある。そんなふうに読みたくなかったのだけど、運動会が暇すぎて気が狂いそうだったのでそうせざるをえなかったのだ。当然の事ながら、僕は普通、漫画でも本でも1巻から順番に読むように努力する。でも、どうしようもない事情があって話の途中からそこに至るまでの経緯を推測しながら読むというのも、やり終わってみるとなかなか悪くない体験のように思う。旅先で暇をもてあましてキオスクで買ったジャンプで読んだ漫画もその話だけいつまでも妙に憶えていたりする。

 kindleを買ってから漫画を気軽に買うようになったので、途中で読むのを止めていたワンピースをまた読み始めたのだけど、仲間が増えるたびにビールで乾杯するのがどうにも興醒めでまた読むのをやめてしまった。なんで漫画の中でまで歓送迎会みたいな面倒事を見せられなきゃいけないのだろう。でもみんなワンピースが好きみたいだ。みんな歓送迎会でビールでカンパイするのが好きだからワンピースが売れてるのだろうか。「こいつらもこいつらなりに人付き合いとかいろいろ大変なんだな」と共感しているのだろうか。よくわからない。

 ジョジョを最初に読んだのは子供の頃に誰かの葬式に連れて行かれたときだった。そのとき買い与えられたジャンプにはヴァニラ・アイスにアブドゥルが殺される話が掲載されていて、なんだかわけがわからない気分になった。「アブドゥルはこなみじんになって死んだ」というヴァニラ・アイスの台詞と、「シューシュー」という肉の焦げる音の書き文字が添えられたアブドゥルの切断された両腕は鮮烈に憶えているけれど、自分が参加したのが誰の葬式だったのかは憶えていない。高校の修学旅行に行くとき友達が買ってきたジャンプには、るろうに剣心の薫が殺される「人誅」のシーンが掲載されていた。見開きでヒロインが殺されている絵を朝の新幹線のホームで見た。それを買って来た友達はコンビニのビニール袋にパンツと歯ブラシだけ入れて片手に持っていて、もう片手にそのジャンプを持っていた。その荷物で二泊三日をやりすごすというのはなかなかいい度胸だ、と思った記憶があるが、その修学旅行で自分がどこへなにをしに行ったのかは全然思い出せない。僕の記憶力は斑気がひどすぎる。