成人式と東京タワー

tower そういえば東京タワーに上ったことがない。近くまで歩いて行って見上げたり、ビルの窓から夜景として眺めたことはあるけど、実際に展望台に上がったことがない。この前久しぶりに会った友人とスカイツリーに行ってみようかという話をしていたのだが、順番としては先に東京タワーに行くべきであるような気がした。ドラクエを4からやってももちろん楽しめるが、選択できる状況であれば1からやるのが筋道というものだろう。

 だからもしその出かける約束が自然消滅しなければ、次にその話題が出たときにはまず先に東京タワーに行くことを提案しようと考えつつ、印刷をミスした紙の裏に東京タワーの絵を描いてみた。描いてみると、自分がボールペンを使って絵を描くのが初めてだということに気がついた。僕はたしか大学生になった頃からボールペンを使い始めたので、もう十年近く趣味的な絵を描いていなかったらしい。なんだか体のどこかの筋がひどく硬くなって縮こまっているのを発見したような気がした。とにかく、記憶の中の東京タワーを思い出しながら絵を描いていたらいつのまにか祝日(成人の日)が終わりかけていた。珍しくテレビをつけてみると成人式の映像が流れていた。テレビの中にも窓の外にも雪が降っていた。雪の降る成人式の映像と自分の描いた絵をしばらく見比べていると、自分はこの十年のあいだ雪に降りこめられた暗い部屋の中で東京タワーがどんな形なのかを想像しながらずっと絵を描き続けていて、ようやく描きあがったのがこの絵であるような気分になった。

 でももちろんそんなことはないのだ。僕はgoogleの画像検索で実物の東京タワーがどんなものだったか調べてみた。窓を描いてしまったのと、足を二本しか描かなかったところが問題だったようだ。僕は納得してブラウザを閉じた。紙はまるめてごみ箱に捨てた。